平成16年度スキー指導者検定準指導員検定会検定員講評
■A班 市川真澄、木塚達也、井上仁司
市川真澄(ブロック技術員)
シュテムターン(テールコントロール)
テールコントロールの種目であるシュテムターンは、落下のエネルギーを利用して、荷重と角付けによっていかにずらすかという技能表現が必要です。したがって舵取り局面の上体の外向操作、谷スキーに荷重をかけたまま重心位置をニュートラルポジションに戻す操作が的確にできるかという点に着目して検定を行いました。
前者に関して、舵取り期にスキーの進行方向に上体が正対し、後者に関しては、伸ばし押し出し的操作をしている例がみられました。
制限滑降
制限滑降での採点は新しい検定種目ですが、積極性の表現にポイントをおいて検定を行いました。斜度の変化地点やポールの設定の変化地点におけるスキー操作の的確さが評価のポイントであったと思われます。また、緩斜面に入って、むりやりポールに身体を当てる動作は無意味な表現であると思われました。
パラレルターン小回り不整地(トップ&テールコントロール)
昨日からの降雪とアイスバーンのためにシビアな条件であったと思われますが、視覚的困難さに負けて回旋操作を主にした演技が多くみられました。カービングスキーでは回旋操作をするほどエッジが立ち、身体が落下しにくくなります。切り替え局面および舵取り局面において、「マイナス角付け」を活用して体を落下させるために、谷側股関節の屈曲と外旋操作の習熟が必要であると思われました。
■B班 肥田野修一、小室勝広、肥田満裕
肥田野修一(理事・ブロック技術員)
パラレルターン小回り整地 (テールコントロール)
ターンの始動を外スキーから始め、外足荷重をベースにスキーをコントロールしながら小回りのリズムを表現して欲しかったと思います。スキーを切り替えるだけの運動と、中心軸操作でターン始動してきた受検生が多く見られました。
パラレルターン大回り整地 (トップ&テールコントロール)
サイドカーブに頼った滑りの方が多くみられました。その結果、切り替えの場面で上下動を効率よく使ったクロスオーバーが表現できなかったり、運動がターンのリズムに併せることが出来なかった方が多く見られました。
プルークターン(トップ&テールコントロール)
パラレルターンへの導入種目としての理解が足りないように見えました。全体的に言えることは 外スキーへの荷重から内スキーの同調を導き出せる外スキーのコントロールを表現して欲しかったと思います。理解不足から、プルークボーゲン、シュテムボーゲンの表現が多かったと思います。
以上のことから、今シーズン結果が出せなかった受検者の方も来シーズンに向け技術向上を目指して練習していって欲しいと思います。検定員一同、期待しています。
■C班 加藤渡、藤村孝三、後藤和広
加藤渡(ブロック技術員)
パラレルターン中回り、パラレルターン大回り (トップコントロール)
ほとんどの受検者の皆さんは、ズレの少ないシャープなターン弧を描いていましたが、その滑走要素、運動要素を見ていくと、いくつかの共通の欠点がみられました。トップコントールによるターン運動は、スキーをターン内側(山側)へ落下させていくことが求められます。今回の受検者皆さんの滑りから、以下の点を再確認して頂くことが必要であると感じました。
- 角付けが優先され、体軸を傾けすぎていないか
- トップコントロールができるポイントに荷重できているか
- スキーの進行方向と脚脛及び体の向きを合わせているか
荷重・角付けによって、スキーが横軸への落下運動を始めます。人間の運動はスキーの運動を導き出すものであることをしっかり考えて滑りたいものです。
プルークボーゲン (テールコントロール)
これほどまでに真剣に、慎重に且つ悩みながらプルークボーゲンをやった経験をお持ちの受検者の方はそれほど多くないでしょう。バランス保持、制動要素、回転の始動に優れたプルークボーゲンは、初心者の方が安心して学ぶことのできる回転技術の代表的なものです。だからこそ、指導者として、しっかりとした技術理解と師範能力が問われると思います。特に、回転が始まる原因は何なのか、それを導き出すために人間はどう動いたらいいのかがしっかりと理解され、表現されることが重要です。受検者の皆さんの滑りにおいては、次のことが採点のポイントとなりました。
- 運動のリズムと回転弧がマッチしているか
- 左右のスキーへの荷重変換がスムーズに行われているか
- 正しいポジションをとり、外スキーへの荷重ができているか
外スキーテール上にしっかりと重心が置かれ、スキーが谷側へ落下しながら方向を変えていくことが、スキーをうまく操ることのできない初心者にとって重要な学習課題である以上、この点を今回の受検者の皆さんに再認識して頂きたいと思います。